■ はじめに
皆さんは、森ビルといえば、何を思い浮かべるでしょうか
六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ。森ビルの名前よりも先に、これらの「ヒルズ」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、森ビルの企業研究では、六本木ヒルズや麻布台ヒルズといった代表的な開発事例を調べ、その規模や機能を整理するだけでは、選考通過という本来の目的には十分につながりません。
大切なのは、目に見える街の背後にある森ビル独自の経営モデルを理解し、そこから同社の企業像と、求められる人物像を読み解くことです。
そこで本コラムでは、街の外観や個別プロジェクトの紹介から入るのではなく、まず経営指標から森ビルを捉えます。
第1章 数字に表れている森ビルの特徴を知る
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第2章 その数字を生み出している経営上の背景を知る
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第3章 その経営が具現化された街づくりを知る
同社の街づくりを単に「規模が大きい」「先進的である」と評価するのではなく、なぜ他社には容易に再現できないのか、どのような経営資産がその優位性を築いてきたのかまで紐づけて解説していきたいと思います。
■ 第一章 森ビルの財務を知る
森ビルの街づくりを理解するためには、まず、同社がどのような経営上の特徴を持つ企業なのかを知る必要があります。
森ビルの経営を一言で表すなら、資産を短期間で売買して利益を得るのではなく、長い時間をかけて築いた優良資産を保有し、そこから厚い利益を生み出す経営です。
この経営スタイルは、森ビルの財務に表れる次の二つの特徴から読み解くことができます。
➊ 営業利益率が著しく高い
❷ ROA(総資産利益率) が著しく低い
森ビルは、売上高に対して大きな利益を生み出す一方、保有する資産が生み出す利益効率は、必ずしも高くありません。
一見すると相反するように見える二つの特徴ですが、実際には、いずれも森ビルが優良な都市資産を長期保有し、その価値を育てながら収益を生み出す会社であることの表れです。
本章では、営業利益率とROAという二つの財務指標を起点として、森ビルの経営モデルを読み解いていきます。
1. 売上高と営業利益率・経常利益率から見る高収益性
森ビルの収益力を捉えるうえで、最初に押さえておきたいのは、同社が売上規模の大きさで業界を牽引する企業ではないという点です。
2026年3月期における森ビルの営業収益は4,111億円です。本稿で比較対象とする総合デベロッパー主要各社のなかでは、売上規模は下位に位置します。

しかし、利益率に目を向けると、森ビルに対する見方は大きく変わります。
2026年3月期の森ビルは、総合デベロッパー主要9社のうち第3位に位置し、その水準は三井不動産のおよそ2倍に達します。売上規模では業界下位に位置しながら、売上の2割以上を営業利益・経常利益として残しているのです。

この高い利益率こそ、森ビルの競争優位を読み解くための最初の手がかりです。
森ビルの利益率を押し上げる分譲事業
では、森ビルの高い利益率は、どの事業から生み出されているのでしょうか。
2026年3月期のセグメント別業績を見ると、特に際立っているのが分譲事業です。

分譲事業の営業収益は、森ビル全体の約2割にとどまります。また、賃貸事業の営業収益と比較すると、その規模は3分の1以下です。
それにもかかわらず、分譲事業が生み出した営業利益は、賃貸事業の営業利益を上回っています。森ビルの分譲事業は、売上規模では賃貸事業を大きく下回りながら、それ以上の利益を生み出しているのです。
その収益性は、他の総合デベロッパーと比較しても突出しています。

総合デベロッパー各社の分譲事業における利益率を比較すると、森ビルの分譲セグメントにおける営業利益率が約68.5%であるのに対し、三井不動産の分譲セグメントの利益率は約26.5%です。森ビルの分譲利益率は、三井不動産のおよそ2.6倍に達します。
この突出した分譲事業の収益性が、森ビル全体の高い利益率を支える大きな要因となっています。
ただし、重要なのは、単に「分譲事業で大きな利益を得ている」という事実だけではありません。
森ビルの分譲事業が、これほど高い利益率を実現できる背景をたどると、森ビルが長年にわたって築いてきた資産基盤と、独自の街づくりの思想が浮かび上がってきます。
森ビルが描く港区を中心とした都心部への集中開発が営業利益ににもたらす効果については、第二章で詳しく解説します。
2. 森ビルのROAは業界最低水準にある
さて、森ビルが売上規模に比して高い利益を生み出していること、そして、その高収益性を分譲事業が大きく支えていることを確認しました。
しかし、企業の収益性は、売上高に対してどれだけの利益を残したかという観点だけで測られるものではありません。
総合デベロッパーのように、多額の不動産を保有する企業を見る場合には、保有する資産全体を、どれだけ効率よく利益へ結びつけているかという観点も重要です。
この資産効率を示す代表的な指標が、ROA、すなわち総資産利益率です。
ROAは、企業が保有する資産全体を用いて、どれだけの利益を生み出したかを示します。
ROA
= 当期純利益 ÷ 期中平均総資産 × 100
= 当期純利益 ÷ 売上高 × 売上高 ÷ 期中平均総資産
= 売上高当期純利益率 × 総資産回転率
売上高当期純利益率は、売上からどれだけの利益を残したかを示します。
一方、総資産回転率は、保有する資産から、どれだけの売上を生み出したかを示す指標です。
つまり、ROAは、「一度の売上から利益を残す力」と「資産を売上へ変える効率」の掛け合わせによって決まると理解しておけばよいでしょう。
さて、2026年3月期における森ビルの数値は、約1.91%です。
前節で確認したとおり、森ビルは売上高に対して高い利益を残しています。
「利益率」はROAを決定する大きな要素の一つですから、当然ROAの観点においても業界最高水準であるはずです。
しかし実は、森ビルの「1.91%」という数値は、総合デベロッパー主要9社のROAと比較した場合、最下位に該当する水準なのです。

なぜ森ビルは、業界最高水準の利益率を有しているにもかかわらず、ROAが低く算出されているのでしょうか。
最大の理由は、ROAを構成する要素のうち、「総資産回転率」が極めて低いためです。
総資産回転率とは、保有資産がどの程度効率的に売上に繋がっているかを示す指標です。※ROAでは基準が利益でした
総資産回転率は、次の式によって算出します。
総資産回転率
= 売上高 ÷ 期中平均総資産
つまり、総資産が売上に対して大きければ大きいほど、この指標は小さくされる算出されることになります。
森ビルの総資産回転率が低いということは、同社が実現した売上に対して保有する資産が非常に大きいということです。
さて、序盤で説明したように、森ビルの売上高はわずか4000億円でした。
さらに、2026年3月期末における森ビルの総資産は、約2.82兆円に達します。営業収益4,111億円に対して、その約6.9倍に相当する資産を保有している計算です。
総資産回転率は僅か、約0.15回です。
主要各社の総資産回転率を比較すると、その差はより明確になります。

同様の方法で算出すると、東急不動産は約0.37回、三井不動産は約0.27回です。森ビルは同業大手と比較して、約2倍以上の資産を用いて同じ売上を立てている。あるいは、他社は森ビルのたった1/2程度の資産で同じ売上を立てているということを示します。
一般に、ROAや総資産回転率の低さは、資産を十分に活用できていない可能性を示します。
しかし、森ビルの数値を、そのまま「経営効率の悪さ」と捉えることはできません。この二つの指標は、いずれも、優良な都市資産を長期保有し、時間をかけてその価値と収益力を高めていくという、森ビル独自の経営モデルを異なる側面から映し出しているからです。
言い換えれば、低い総資産回転率は、高い利益率を生み出す経営モデルの単なる「弱点」ではなく、そのモデルを選択した結果として生じる、表裏一体の財務的特徴なのです。
次章では、森ビルがどのようにして高い利益率を生み出しているのか、そして、その過程で生じる低い総資産回転率が、なぜ同社の競争優位と結びついているのかを、資産構成、開発手法、経営・財務基盤の三つの観点から読み解いていきます。
■ 第二章 背景にある森ビルの経営を知る
前章では、森ビルの財務に表れる二つの特徴を確認しました。
➊ 売上高に対する利益率が高い
❷ ROA・総資産回転率が低い
一見すると対照的に見えるこの二つの特徴は、森ビルが採用している独自の経営モデルから生まれています。
財務指標は、あくまでも企業活動の結果です。
森ビルの利益率がなぜ高く、総資産回転率がなぜ低いのかを本質的に理解するためには、その数字を生み出している経営の仕組みに目を向ける必要があります。
本章では、森ビルの経営モデルについて、次の三つの特徴から紐解いていきます。
➊ 港区に開発を集中し、街と資産のブランド価値を高める
➋ 長期間をかけて街をつくり、完成後も資産を保有し続ける
➌ 長期的な都市開発を可能にする資本体制を持つ
これら三つの要素は、それぞれ独立した特徴ではありません。
➊→❷→➌と順に追うことで、森ビルが森ビル独自の経営モデルがどのように成立しているのかを深く理解することができます。
1.高収益な資産基盤を生み出す港区への集中開発
まずは、森ビルの収益性を支える第一の基盤から見ていきましょう。
森ビルは、東京のなかでも港区を戦略エリアと定め、開発・保有・運営する資産を集中的に積み上げてきました。
2026年3月期の投資家向け説明資料では、掲載された国内主要物件12件のうち、表参道ヒルズを除く11件が港区に位置することが示されています。
中でも、アークヒルズ、愛宕グリーンヒルズ、六本木ヒルズ、元麻布ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズなど、森ビルを代表する国内資産の大半が、六本木、虎ノ門、麻布台を中心とする限られた範囲に集積しています。
【図表7:森ビルの国内主要物件と所在地】
もちろん、港区で大規模開発を行っているデベロッパーは森ビルだけではありません。
森ビルの特徴は、港区に物件を持っていること自体ではなく、同じエリアで複数の街を連続的に開発・保有することによって、地域全体の価値を自社の資産価値へ取り込んでいる点にあります。
その仕組みは、主に次の二つに分けられます。
➀ 高単価市場でヒルズブランドを構築し、近接するヒルズ同士の相乗効果を活用して自社の資産価値を引き上げる
➁ 細分化された土地を縦に統合・立体化し、土地当たりの収益床を増やすことで利用導線と資産効率を共に引き上げる
➀ 高単価市場でヒルズブランドを構築し、近接するヒルズ同士の相乗効果を活用して自社の資産価値を引き上げる
港区は、東京23区のなかでも住宅・オフィス・商業のいずれにおいても、高い価格が成立しやすい市場です。

ただし、地価が高いこと自体が、高い利益率を保証するわけではありません。土地を取得する際の費用も高くなるため、単に港区で建物を開発するだけでは、十分な収益性を確保できないからです。
森ビルの優位性は、高い購買力と賃貸需要が存在する港区において、住宅やオフィスを単体で供給するのではなく、街全体を一つの商品として設計している点にあります。
ヒルズには、住宅やオフィスだけでなく、商業施設、ホテル、文化施設、教育機関、医療機関、緑地、広場などが一体的に組み込まれています。
そのため、住宅の購入者やオフィステナントは、交通利便性、安全性、文化性、緑地、サービス、コミュニティ、災害対応力などを含めた、街で過ごす体験そのものに対して対価を支払っています。
森ビルの住宅事業が掲げる「ヒルズに住む」という価値も、住戸単体ではなく、都市機能と一体化した生活環境を商品として提供する考え方です。
また、複合都市の開発によるブランド価値の向上は各ヒルズ内にとどまらず、港区を集中的に開発していることで近接したヒルズ同士のブランド力も創出しています。
このような地域集中による循環が、森ビルの高い賃料水準や、住宅分譲事業における高い販売単価を支えています。
実際、分譲事業では同じ港区エリアにおける主要デベロッパーの開発物件の中でも、圧倒的な坪単価を誇っています。


高い価格が成立する市場に都市機能を集中させ、「ヒルズで暮らすこと」「ヒルズで働くこと」自体を付加価値へと転換しているのです。
もっとも、ヒルズシリーズの圧倒的なブランド力について語る際、他社と一線を画した提供サービスの品質、街全体が持つ文化的価値を外すことはできません。街開発における詳細な戦略は第三章で解説します。
➁ 細分化された土地を縦に統合・立体化し、土地当たりの収益床を増やすことで利用導線と資産効率を共に引き上げる
もう一つ重要なのが「立体都市」という開発思想です。
港区の既成市街地には、細分化された土地や狭い道路、老朽化した建物が数多く存在していました。
森ビルは、細かく分かれた土地を街区単位でまとめ、建物を高層化します。そのうえで、地上には広場や緑地を確保し、上空と地下に住宅、オフィス、商業、ホテル、文化施設などの都市機能を立体的に配置します。
例えば、麻布台ヒルズは約8.1ヘクタールの計画区域に、約86万平方メートルの延床面積を整備し、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、教育機関、医療機関、文化施設などを集積しています。
この立体化が利益に作用する経路は明確です。
平面的には限られた土地でも、高度利用によって販売・賃貸できる床を増やせば、同じエリアから、より多くの住宅販売収入、オフィス賃料、商業収入、ホテル収入を生み出せます。
以上を整理すると、森ビルは、
➊ 高い価格が成立する市場を選び
➋ 細分化された土地を街区単位で統合し
➌ 立体化によって収益床と都市機能を増やし
➍ 複合機能の運営によって床の付加価値を高めることで
➎ その価値を近接する自社資産へと波及させる
という一連の仕組みによって、港区への集中開発を競争優位へと転換してきました。
この仕組みが、高単価な住宅分譲、高稼働の賃貸資産、長期的な資産価値の上昇を支えています。
では、森ビルは、東京のなかでも特に権利関係が複雑な港区の既成市街地を、なぜこれほど大規模に再編できるのでしょうか。
その答えが、二つ目の特徴である、数十年に及ぶ合意形成と、完成後の長期保有にあります。
2.30年をかけて街をつくり、完成後も保有し続ける
森ビルの二つ目の特徴は、開発に長い時間をかけ、完成した資産を原則として長期保有することです。
六本木ヒルズでは、約400人の地権者とともに17年をかけて開発が進められました。
麻布台ヒルズでは、1989年に街づくり協議会が設立されてから、約300人の権利者との協議を重ね、2023年の開業まで約35年を要しています。
1989年は、元号が昭和から平成へ変わった年です。
一つの元号が始まった年に発足したプロジェクトを、その元号が終わった後も同じ企業が継続し、令和に入ってから完成させたことになります。
仮に、新卒社員がプロジェクトの初期段階から関わったとすれば、完成時には会社員人生の後半を迎えているほどの期間です。
森ビルの都市開発は、単に規模が大きいだけではありません。一つの時代をまたいで継続される、極めて長期的な事業なのです。
他社の主要な再開発プロジェクトと比較しても、森ビルの開発期間は際立っています。

当然ながら、開発途中の土地や建物は、街が完成するまで十分な売上を生み出しません。
その間も、土地、建設仮勘定、開発費などには多額の資金が投じられ、貸借対照表上の資産として積み上がっていきます。つまり、開発期間中は、総資産という分母が増加する一方、売上高や利益という分子は十分に増加しません。
この構造が、森ビルの総資産回転率やROAを押し下げる大きな要因となります。
短期的な資産効率だけを重視するのであれば、数十年にわたって資金を固定する開発手法は、決して合理的とはいえません。
しかし、森ビルにとって、開発に要する時間は単なる非効率ではなく、むしろ森ビルの競争優位を保つ命綱と言っても過言ではありません。
長期間に及ぶ合意形成は、開発前に発生する単なる待ち時間ではなく、細分化された土地を一体的な都市資産へと変えるための、価値創造の工程そのものです。
その時間に耐え、合意形成を積み重ねる能力そのものが、他社が容易に再現できない参入障壁になっています。
また、森ビルは、完成後も、優良資産の多くを自社の貸借対照表に残します。テナント誘致、施設運営、イベント、防災、警備、清掃、植栽、物流、エリアマネジメントなどを自ら担い、街の価値を継続的に更新することでエリアのブランド価値を高めているのです。
資産を保有し続ければ、総資産は大きくなり、短期的な総資産回転率は更に低くなりますが、一方で、賃料収入を長期間にわたって獲得できるだけでなく、運営によって街の魅力を高めた成果を、稼働率、賃料、住宅価格、資産価値として自社に蓄積できます。
つまり森ビルは、開発前から開発後まで一貫して、資産の回転速度の追求ではなく、一つの都市資産から得られる収益の総量を、時間をかけて最大化する経営を選択しています。
この長期保有型の経営が、前章で見た利益率とROAの特徴を同時に生み出しているのです。
最後に、森ビルはなぜ、他社には実現できない時間軸で街開発を実現できるのでしょうか。その競争優位性の源泉とも言える資本体制を見ていきましょう。
3.長期の都市開発を可能にする資本体制
港区への集中開発と長期保有型の経営は、優れた都市計画を描くだけでは実現できません。
開発期間中は多額の資金が固定され、完成後も資産を売却せずに保有し続けるため、長期にわたって投資を支えられる経営・財務基盤が必要です。
森ビルがこの経営を続けられる背景の一つが、非上場企業としての意思決定構造です。

総合デベロッパー業界における非上場企業は森グループ2社のみ
非上場であること自体が、長期的な経営を保証するわけではありません。また、上場企業であっても、数十年に及ぶ都市開発を行うことは可能です。
それでも、四半期ごとの株価や資本市場からの評価に直接左右されにくい森ビルは、相対的に長い時間軸で投資判断を行いやすいと考えられます。
短期的なROAや資産回転率が低下しても、将来的に街全体の価値を高めると判断すれば、数十年に及ぶ合意形成と開発を継続する。
完成した資産についても、資本効率を改善するために直ちに売却するのではなく、将来の収益基盤として保有し続ける。
この意思決定の時間軸が、森ビルの街づくりを支えています。
実際、日経新聞でのインタビューや公式HPでは、「非上場の道楽」と言われても、文化という要素を取り入れた都市づくりを進めることで、森ビルは「デベロッパーの使命を果たす」ことを大切にしていると書かれています。
地域を限定し、長い時間をかけて街をつくり、完成後も自ら保有・運営し続ける、この一連の開発を実現する経営体制そのものが、森ビルの競争優位の根源なのです。
+α:ROAのカラクリ
森ビルのROAを読み解くうえでは、もう一つ押さえておくべき点があります。
森ビルは2026年3月末時点で、賃貸等不動産に約1.6兆円の含み益を有しています。
帳簿価額:約2.0兆円
時価:約3.6兆円
含み益:約1.6兆円
含み益とは、保有する不動産の時価が、貸借対照表に計上された帳簿価額を上回る部分です。現時点で実現した利益ではありませんが、森ビルが長年にわたって保有・運営してきた不動産に、帳簿上の金額を大きく上回る価値が蓄積されていることを示しています。
約1.6兆円という金額は、時点によって変動するものの、JAL(日本航空)一社の時価総額に匹敵する規模です。保有不動産に生じている未実現の評価差額だけで、日本を代表する上場企業一社に相当する価値を有していることになります。
ROAは、帳簿上の総資産に対して、単年度にどれだけの利益を生み出したかを見る指標です。そのため、保有不動産の時価上昇や、街のブランド、将来の賃料収入といった資産の質までは十分に表せません。
つまり、森ビルの低いROAは、価値の低い資産を抱えている結果ではなく、希少性の高い都市資産を長期間保有し、その価値を貸借対照表の内側に蓄積してきた結果でもあると言えます。
最も大切なのは、低いROAと巨額の含み益はいずれも、森ビルの競争優位の源泉である長期保有型経営を異なる角度から映し出した数字であることを知っておくことでしょう。
■ 第三章 森ビルの街開発を知る
ここまで、森ビルの財務と、その数字を生み出す経営モデルを見てきました。
森ビルは、港区を中心とする限られたエリアに開発を集中させ、数十年をかけて土地をまとめ、完成後も資産を保有・運営し続けています。
では、こうした経営モデルは、実際の街にどのような形で表れているのでしょうか。
森ビルの企業研究で注意したいのは、六本木ヒルズや麻布台ヒルズの施設概要を覚えること自体が目的になってしまうことです。
延床面積、建物の高さ、店舗数といった数字を並べるだけでは、森ビルがなぜその街をつくったのか、そして、その開発が他社と何を異にするのかまでは見えてきません。
重要なのは、開発前の地域がどのような課題を抱えていたのか、その課題に対して森ビルがどのような都市像を提示したのか、そして、そこに同社の街づくりの思想がどのように表れているのかを読み解くことです。
森ビルがこれまで手がけてきた主要な街づくりは以下の通りです。

これらの街には、ここまでも説明してきたような以下のような共通点となる街開発のテーマ/開発スタイルがあります。
➊ 長期的な街開発:
10年以上にわたり、数百名の関係者をまとめて大規模な開発
❷ オフィス、住宅、商業施設などを複合した複合都市開発
➌ 立体都市の開発
しかし、すべてのヒルズが同じ型でつくられているわけではありません。
文化を中心に据える六本木、ビジネスと交通を中心に据える虎ノ門、緑と健康を中心に据える麻布台というように、それぞれの地域が持つ可能性と課題に応じて、異なる都市機能が中核に置かれています。

ここからは、森ビルの街づくりの進化を理解するうえで重要な3つのプロジェクトについて、3つの街開発の共通テーマに沿って行きながら、その進化と違いを見ていきましょう。
➀ アークヒルズ:前例のない都市モデルを切り拓く開発
➁ 六本木ヒルズ:文化を街の磁力へ変え、完成後も価値を育てる
➂ 麻布台ヒルズ:人と緑を起点に、都市の未来像をつくる
■ 1. アークヒルズ ~民間による日本初の大規模再開発事業~
まずは、森ビルが現在まで受け継ぐ街づくりの原型を築いたプロジェクト、「アークヒルズ」から見ていきましょう。
アークヒルズという名称は、「赤坂(A)」と「六本木(R)」の結節点を意味する「Knot(K)」の頭文字を組み合わせたものです。
赤坂と六本木をつなぐ場所に誕生したこの街は、立地だけでなく、開発の手法や思想という点においても、その後のヒルズシリーズの起点となりました。まさに、森ビルの街づくりの原点といえるプロジェクトです。

エリアポイント➊ 前例のない未来都市を切り拓いた最初のプロジェクト
開発前の1960~70年代、現在のアークヒルズに当たる赤坂・六本木地区は、都心に位置しながら地下鉄駅から離れ、狭い道路と老朽化した住宅が密集する、いわば「陸の孤島」のような地域でした。
地区内には約20メートルの高低差もあり、交通利便性だけでなく、防災性や住環境の面でも多くの課題を抱えていたと言われています。
森ビルが、約5.6ヘクタールに及ぶこれらの土地を一つの街区としてまとめ、1986年にアークヒルズを完成させるまで、およそ17年の期間を要しています。
森ビルの元代表取締役社長である森稔氏は、当時の開発について、次のように振り返っています。
アークヒルズの開発が始まる当時、まだ「ディベロッパー(開発事業者)」という言葉すら存在しなかった。「不動産屋ごときに、土地の買収を伴うような街づくりの権利を与えるなどとんでもない」。不動産業に対する社会的信頼もまだ低く、街づくりの実績も少なかったため、世の中からそう思われても仕方のない面もあった。
~ 中略 ~
本来、再開発とは、そこに住んでいる人に、いままでの生活や人生とは違う生活や人生を押しつける。社会的に意義があったとしても、そうした面は否めない。大変な共同作業だとつくづく思う。
アークヒルズの再開発は、低層の街を超高層都市に創り替える最初の事例だった。だから、余計に反発や不安も強かったのかもしれない。しかし、都心部をもっと空へ、そして地下へと立体的に活用すれば、はるかに多くの空間を生み出せる。土地を増やすことはできなくても、空間を増やすことはできるのだ。それも緑豊かな環境で、災害時にも安全で、温かなコミュニティが育つ街をつくっていくことで、より多くの人が都心で、充実した職住近接の暮らしができるようになるのである。
アークヒルズにおける経験は、いま思えば、森ビルの市街地再開発事業の「元年」というべきものだった。
開発エピソードを読むと、アークヒルズが単に大規模な建物を建設したプロジェクトではなかったということがわかります。
民間企業が都市の将来像を描き、多数の地権者と対話を重ねながら、低層の既成市街地を一つの複合都市へと再編する。当時としては前例のない試みであり、現在の森ビルを支える長期的な街づくりの出発点でもありました。
「できるはずがない」と考えられていた領域に踏み込み、時間をかけて社会や地域の理解を得ながら、新たな都市の形を実現する。
アークヒルズには、前例の有無ではなく、都市に必要なものから逆算して構想を描く、森ビルの開拓者としての姿勢が表れています。
エリアのポイント➋ その後のヒルズを支える二つの思想の原点
アークヒルズの開発コンセプトは、知的生産性を高めるという時代背景と、国際化・情報化の進展の中、東京・ロンドン・ニューヨークという24時間ビジネス体制に応える新しい、21世紀のビジネス街づくりでした。
その構想には、後のヒルズシリーズへと受け継がれる二つの重要な思想が表れています。
一つ目は、都市に必要な多様な機能を一体化する「複合都市」という考え方です。
アークヒルズには、大規模な超高層オフィス、都心型住宅、本格的なシティホテル、約2,000席のコンサートホール、テレビスタジオ、商業施設、広場、庭園などが集積しています。
ビジネス、生活、文化、情報、レジャーを一つの街に融合させ、住み、働き、遊び、憩い、交流できる環境をつくる。森ビルはこの都市像を、ビジネス都市、24時間型複合都市、快適環境都市、インテリジェントシティを統合した「全環境都市」と表現しました。
開業当初、オフィス棟であるアーク森ビルには、ゴールドマン・サックスをはじめとする外資系企業が入居し、アークヒルズは東京を代表する国際ビジネス拠点の一つとなりました。

また、スターバックスコーヒーが日本で初めてオフィスビル内に出店した場所もアークヒルズです。
こうした事例からも、アークヒルズが当時の東京に、新しい働き方や都市生活の姿を持ち込んだ先進的な街であったことが分かります。
二つ目は、建物を高層化し、地上を人と緑に開放する「立体緑園都市」という思想です。
開発地区は丘陵地にあり、区域内には約20メートルの高低差が存在していました。森ビルは、この地形を開発上の制約として排除するのではなく、段状の広場や立体的な歩行者空間を生み出すために活用しました。
ペデストリアンデッキなどによって歩行者動線を立体的に構成し、敷地全体の約55%に当たる公開空地を確保しています。
建物を空と地下へ伸ばすことで都市機能を集約し、地上には広場、庭園、歩行者空間を生み出す。土地そのものを増やすことができない都心において、利用できる空間を立体的に増やすという考え方です。

アークヒルズは、複合都市と立体緑園都市という、現在のヒルズシリーズを支える二つの基本思想を初めて本格的に形にしたプロジェクトです。
森ビルの担当者が、「新しいヒルズが次々にできているが、ベースはすべてアークヒルズにある」と語るように、その後の六本木ヒルズや麻布台ヒルズで発展していく開発手法や理念は、すでにこの街の中に存在していました。
計画の立ち上げから17年。
現在の森ビルにつながる長期開発、複合都市、立体緑園都市という街開発の思想は、すべてアークヒルズから始まったと言えます。
■ 2.六本木ヒルズ――文化を都市の磁力へ変え、「都市を育む」
次に取り上げるのは、森ビルの街づくりを最も広く社会に印象づけた「六本木ヒルズ」です。
次節で紹介する麻布台ヒルズが開業するまで、六本木ヒルズは森ビルを代表する開発であり、日本の大規模複合都市を象徴する存在でもありました。

六本木ヒルズは、約400人の地権者との協議を重ねながら、約12ヘクタールの区域を17年かけて再編し、2003年に開業しました。
街には、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、映画館、テレビ局、文化施設、広場、庭園など、多様な都市機能が徒歩圏内に集約されています。
アークヒルズで生まれた複合都市や立体緑園都市の考え方を受け継ぎながら、それを規模、機能、社会的な影響力のすべてにおいて、より大きく発展させたプロジェクトといえるでしょう。
しかし、六本木ヒルズの本質は、単にアークヒルズを大規模化したことにあるのではありません。
六本木という地域の特性を踏まえ、従来のヒルズにはなかった明確な都市の個性を加えたことにあります。
その個性を端的に表すのが、「文化都心」というコンセプトです。
エリアのポイント都➊ 最も高い場所に文化を置く
六本木ヒルズ森タワーの高層部には、森美術館、展望施設、アカデミーヒルズなどからなる文化施設が配置されています。
通常、超高層ビルの上層部は眺望に優れ、高い賃料を設定しやすい場所です。
その収益性の高い空間を、オフィスや高級住宅だけでなく、美術館や文化発信の場に充てる。
この配置には、文化施設を商業施設に付随する集客装置としてではなく、街の価値を形成する中核的な機能として位置づける、森ビルの思想が表れています。
森ビルの採用サイトにおいても、社員が「文化都心を実現するために、六本木ヒルズの最上部に美術館を置いた」と、その象徴性を語っています。
アークヒルズにおいて、サントリーホールを街の主要機能として組み込んだ思想が、六本木ヒルズでは「文化都心」という明確な都市戦略へと発展したと捉えることができます。
エリアのポイント② 開発後も、地権者と共に「都市を創り、都市を育む」
六本木ヒルズでは、約400人の地権者と17年にわたって協議を重ねました。
開発過程では、全体計画、住宅計画、権利変換、管理、防災などを検討する委員会が設けられ、会報も継続的に発行されました。時期によっては、委員会や理事会、地区ごとの会合が、ほぼ毎日のように開かれていたとされています。
更に、森ビルの関与は2003年の開業後、20年経った今でも続いています。
街全体を一体的に運営するタウンマネジメントを通じて、イベント、文化発信、コミュニティ形成、環境演出、テナント構成の更新などを継続しています。
結果、商業施設の年間売上は、開業20年目に当たる2022年度に過去最高を更新しました。約5年ごとに大規模な店舗改装を重ね、2008年には約70店舗、2013年には約40店舗、2018年と2020年にはそれぞれ約20店舗を刷新するなど、街の鮮度を保ち続けてきた結果です。
開発前には地権者とともに街の姿をつくり、開業後には運営によって人が訪れ続ける理由を更新する。
六本木ヒルズは、複合都市、立体都市といったヒルズのコンセプトを起点にしつつ、アークヒルズよりもさらに多くの人を巻き込んだ開発を行いました。
街と共に、開発後も街を創り続ける意味合いを強め、そして文化的価値をさらに組み込んだあらたなヒルズの形の誕生です。
■ 3.麻布台ヒルズ――建物より先に、人と緑を設計する
最後に取り上げるのは、森ビルが、これまでのヒルズで培ってきた知見を結集した「ヒルズの未来形」と位置づける麻布台ヒルズです。

麻布台ヒルズの街づくりが始まったのは、1989年に街づくり協議会が設立されたときです。その後、約300名の権利者との協議を重ね、2019年の着工、2023年11月の開業を経て、2025年10月にレジデンスBが竣工しました。これにより、道路と歩行者ネットワークを含むプロジェクト全体は、過去最大となる35年を超える歳月を経て完成しています。
約8.1ヘクタールの計画区域には、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、文化施設、教育機関、医療機関など、多様な都市機能が集積していますが、麻布台ヒルズには、これまでのヒルズとは一線を画した「緑」という一貫したテーマが表れています。
エリアのポイント➊ 「立体緑園都市」の完成形を示す
麻布台ヒルズの設計を特徴づけるのは、これまでのヒルズが描いてきた「立体緑園都市」の概念を覆していることにあります。
森ビルは、麻布台ヒルズの開発にあたり、建物を配置した後に、残された空間を緑化したのではなく、まず人が集う中央広場と、人の流れをつなぐ緑のランドスケープを描き、その後に超高層タワーを配置しました。
建物を起点に外部空間を決めるのではなく、人が地上でどのように過ごすかを起点として、都市全体を逆算したのです。
細分化された土地を一つにまとめ、都市機能を空と地下へ立体的に集約することで、地上にまとまった広場や緑地を生み出す。高層化を目的とするのではなく、高層化によって地上を人と自然に開放するという考え方です。
麻布台ヒルズの緑地には、四季によって表情を変える約320種の植物が植えられ、そのうち6~7割程度には、チガヤ、イロハモミジ、ケヤキなどの在来植物が採用されています。
果樹園や菜園も整備され、緑は眺めるための装飾にとどまらず、収穫やイベント、人々の交流を生み出す場所として運営されています。
延床面積約86万平方メートルという高密度な都市をつくりながら、その足元には大規模な緑と広場を生み出す。
都市機能の集積と豊かな自然環境を対立させるのではなく、立体化によって両立させた点に、麻布台ヒルズの特徴があります。
エリアのポイント➋ 都市の利便性ではなく、人の暮らし全体を設計する
麻布台ヒルズには、もう一つ、「緑」を用いた街のコンセプトがあります。
それは、
「Modern Urban Village――緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」
国際都市としての高度な機能と、小さな村のような人と人との近さを両立させることを目指しています。そのコンセプトを支える二つの柱が、「Green」と「Wellness」です。
街には、慶應義塾大学予防医療センター、ブリティッシュ・スクール・イン東京、ホテル、住宅、オフィス、商業施設、マーケット、文化施設などが組み込まれています。開業時には、ベンチャーキャピタル約70社が集まる拠点や、約150の店舗、デジタルアートミュージアムなども計画されました。
麻布台ヒルズでは、あらゆる人の営みを徒歩圏内に集約し、街で過ごす時間全体を豊かにすることが構想されています。
アークヒルズが、働く、住む、遊ぶといった都市機能を一つに集めた「全環境都市」であったとすれば、麻布台ヒルズは、その対象を人の心身の健康や生活の質にまで広げた街と捉えることができます。
■ さいごに
第一章では、森ビルが高い利益率と低いROAを同時に持つことを確認しました。
第二章では、その背景に、港区への集中開発、長期開発・長期保有、長期的な意思決定を支える資本体制があることを見てきました。
そして本章で見た街は、その経営モデルが実際の都市空間として表れたものです。
アークヒルズでは、働く、住む、楽しむという都市機能を一体化しました。
六本木ヒルズでは、文化を街の中心に置き、完成後の運営によって都市の磁力を高め続けています。
表参道ヒルズでは、土地を高度利用しながら、地域の景観と記憶を残しました。
虎ノ門ヒルズでは、道路や地下鉄駅まで一体的に整備し、東京の交通とビジネスの構造を変えました。
麻布台ヒルズでは、建物より先に緑と人の居場所を設計し、健康そのものを都市の価値として提示しています。
これらに共通するのは、目先の床の収益性だけで、街のあり方を決めていないことです。
長期的に価値を生むと考える文化、緑、交通、教育、医療、コミュニティに投資し、その成果を周辺の保有資産を含めて時間をかけて回収する。
だからこそ、森ビルの開発には長い時間と大きな資産が必要になり、ROAや総資産回転率は低くなります。
その一方で、他社が容易に再現できない街のブランドと、多額の含み益を持つ都市資産が蓄積されていきます。
森ビルを「大規模な超高層ビルをつくる会社」と理解するだけでは十分ではありません。
森ビルとは、地域の課題を数十年かけて解き、文化、緑、インフラ、コミュニティを組み込んだ都市をつくり、完成後も保有・運営しながらその価値を育て続ける会社です。
財務に表れた高い利益率と低いROAは、その街づくりの結果です。
そして、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズという街は、その経営思想を最も分かりやすく映し出した、森ビルそのものだといえるでしょう。
森ビルの街づくりに共通する四つの特徴
ここまでの開発を整理すると、森ビルの街づくりには、四つの共通した特徴があります。
➊ 建物ではなく、地域の課題から考える
森ビルは、最初から建物の形を決めているわけではありません。
細分化された土地、狭い道路、防災上の問題、交通インフラの不足、緑や文化の欠如など、地域が抱える課題を捉え、それを解決するために必要な都市の形を考えます。
そのため、六本木では文化、虎ノ門では交通とビジネス、麻布台では緑と健康というように、街ごとに異なる答えが生まれています。
➋ 収益性の高い用途と、街の価値を高める機能を組み合わせる
オフィスや住宅だけでなく、美術館、コンサートホール、学校、医療施設、広場、庭園などを組み込みます。
これらの施設は、すべてが単独で高い収益を生み出すとは限りません。
しかし、人がその街を選ぶ理由を増やし、オフィス、住宅、商業施設を含む街全体の価格とブランドを高めます。
個々の施設ではなく、街全体で採算を捉える点に、森ビルの特徴があります。
➌ 完成を開発の終点にしない
森ビルは、完成した資産を保有し、イベント、文化発信、コミュニティ、防災、サービス、テナント構成を継続的に更新します。
開発がハードをつくる仕事だとすれば、タウンマネジメントは街を使い続けてもらう理由をつくる仕事です。
森ビルにおいては、この二つが分離していません。
数十年かけてつくった街を、さらに数十年かけて育てることが、同社の都市開発です。
➍ 複数の街をつなぎ、エリア全体で価値を高める
森ビルは、港区のなかに点在する物件を個別に保有しているのではありません。
六本木、虎ノ門、麻布台、赤坂・六本木一丁目といった近接地域に、異なる機能を持つヒルズを連続的に配置しています。
道路、鉄道、地下通路、歩行者デッキによって街同士をつなぎ、それぞれの個性を連携させることで、広域的な都市ブランドを形成しています。
森ビルがつくっているのは、一棟のビルでも、一つの再開発地区でもありません。
複数の街が結びついた、東京のなかの新たな都市圏なのです。